北海道で鹿が増え、牧場や作物を荒らし、大変な被害が出ているそうです。
奈良公園や宮島での「神の使い」として大事にコントロールされている鹿ばかり見ているので、北海道で害獣との扱いを受けている鹿の様子はなかなか想像できません。
しかし、こういうニュースを聞くと、子供のころ観たアメリカ映画「仔鹿物語」を思い出します。
開拓時代の西部のとある家族の物語。
生きるために一頭の鹿を射殺しますが、その鹿には幼い仔鹿がいて、一家は息子ジョディの願いもあり、仔鹿を飼うことになります。
フラッグと名付けられ、ジョディのかけがえのない友達・弟のような存在となった仔鹿ですが、次第に野生の特性が出てきます。
一家の大事な畑の作物を荒し、甚大な被害を及ぼします。
近所でもその行為は行われ、苦情を受けることとなる一家。
森の奥深くに放しても、帰ってくるフラッグ。
ジョディは射殺の話を翻すために高い柵を作りますが、楽々と飛び越え、やはり荒し放題のフラッグ。
ついに母親がフラッグに向け、銃を放ちます。
深手を負い、森に逃げたフラッグ。
そこでグレゴリー・ペッグ演じる父親が言います。
「苦しまないようにとどめを」
ジョディは銃を持ち、フラッグを追って森に入り、そして大きく轟く銃声。
振り向いたジョディの顔は溢れる涙でぐちゃぐちゃでした。
子どもだった私も声を出して泣き、しばらくその嗚咽が止まりませんでした。
そしてこの映画と同じくらい、洋画劇場の解説者・淀川長治さんの言葉が心に刺さりました。
「これが生きるということなんです」
「生きる」ということが切羽詰まった状態になることがない・・・そんな暮らしの中にいる私ですが、それでも遠い北海道の自然の中で日本の食を支え続ける人たちが、命と命の向き合う中にいることを思い出さなくてはなりません。
黒い大きな瞳を見ると思わず「可愛い!」と言ってしまう鹿たちが、かの地では脅威となっていること。
動物愛護に強い関心がある私ですが、ペットの殺処分や悪環境問題とは全く違う次元の問題と理解しています。
殺処分されるのであろう鹿たちのその命に人間として思いを馳せながらも、食を守る人々に感謝をするひと時を持たなければと思いました。
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